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「弁護士業界」勝手に解説-「債務整理のお話し」(1) [「弁護士業界」勝手に解説]

私が弁護士に登録したのは平成2年、今から20年以上も前のことです。この当時も消費者金融やクレジットカードを使い過ぎて支払不能になる人はいて、私も弁護士に登録したその年から債務整理の事件を受任した記憶があります。

●利率の変更の歴史と利息制限法
最近では、弁護士じゃなくても多くの人たちが利息制限法による制限利率のことを知るようになりましたが、昔はそんな利率を気にしている貸金業者はいませんでした。当時の消費者金融の利率は、年40.004%というのが一般的で、名の通った業者もこの利率でお金を貸して暴利をむさぼっていました。

100万未満は年18%が上限という利息制限法があるのに、どうしてこんな利息で商売ができたかというと、貸金業規制法(平成18年に「貸金業法」に改正)という法律があって、そこで上限利息を決めていたからです。年40.004%というのは、この貸金業規制法の上限金利だったのです。

※※マスダのちょっぴり解説※※
ちなみに、この貸金業規制法の上限金利が40.004%になったのは平成3年の11月からで、その前の金利は、昭和61年11月以降は年54.75%、58年11月以降は年73%、それまでは年109.5%と規定されていました。この当時貸金業を営んでいたら、ある程度の種銭があれば数年で何倍にも膨れ上がるのですから、笑いが止まらないという状態だったでしょう。(最近の上限金利は、平成12年6月以降は年29.2%、平成22年6月以降は年20%となっています)

利息制限法が制定されたのは昭和29年で、そのころより制限利息は今と変わらなかったのに、貸金業規制法の利息が有効となるようでは利息制限法の意味がなくなるのですが、利息制限法制定時の貸金業者と消費者保護の立場との妥協の産物として、貸金業規制法の中に、利息制限法に定める制限利息を超えた超過部分(いわゆる「グレーゾーン金利」)も、債務者が「任意に支払った場合」には、一定の要件の下で有効な利息の弁済とする「みなし弁済」規定(同法43条)が織り込まれたために、実質的に利息制限法が骨抜きにされてしまっていたのです。

本来、貸金業規制法の上限利率は、それ以上の利息を取ったら犯罪として処罰されるという金利(これを超えると「犯罪=黒」なので、それと利息制限法の範囲内の「白」との間の利率を「灰色=グレーゾーン」と呼んでいるのです。)ですから、消費者保護法規である利息制限法の上限利率を超えた部分を民事的に有効な利息と認めるのとは本来無関係のはずなのですが、利息制限法制定時の一般的な利率が年100%を超えるような高利だったため、いきなり利息制限法の水準まで引き下げることもできずに、このような妥協的な規定が制定されてしまったのでしょう。

●債権者との戦いのキーポイント:「みなし弁済」
私が弁護士になったころは、貸金業規制法の上限利率が40.004%ですから、100万未満の借入であれば、利息制限法との間には22%以上の年利の差がありました。その差を埋めるために当時の弁護士は戦っていたのです。

そのころの弁護士の戦いは、「みなし弁済」規定の適用のための要件を厳格に判断して、業者側のほんの小さな落ち度も見逃さずに「みなし弁済」の無効を主張するという争いや、途中で完済して再借入れをしている場合に、その間の借入を一連の取引として利息計算をするなどの手法で貸金業者の主張と戦っていました。

当時の裁判所の姿勢は、必ずしも消費者の立場に立ってくれていた訳ではなく、ちゃんと判断能力のある大人が分かって契約しているのだし、「みなし弁済」という法律上の根拠があるのだから、その利息を払わせるのはおかしなことではないというのが、ベテランの裁判官の考えだったような気がします。

ところが、下級審の判決の中に、「みなし弁済」を認めるのは例外なので、その適用は厳格な要件をクリアしたものだけにすべきだという考えの判決が見られるようになり、加えて消費者金融による多重債務が社会問題化してきたこともあって、徐々に債務者側の主張が認められるようになって、それが最高裁判例に結び付くとともに、グレーゾーン金利撤廃の立法にも結びついたのです。

●過払い金請求の現在
私が弁護士になってからでも13年間以上も、貸金業者との利息を巡るせめぎあいが続き、最終的に最高裁の平成18年1月13日判決が、期限の利益喪失約款の下での返済について「みなし弁済」の要件である「任意性」を原則として否定したため、貸金業者の「みなし弁済」主張が困難になり、加えて貸金業規制法自体の法改正も行われたことから、グレーゾーン金利の問題は収束に向かうことになりました。

このように、現在貸金業者に対して過払い請求が簡単にできるようになったのは、私よりも上の世代の弁護士が先鞭をつけ、同世代の弁護士たちが必死に貸金業者と戦って勝ち取った成果だということを知る若い弁護士は少なくなっています。

彼らにとっては弁護士になったときから過払い請求ができるのは当たり前だったのですから、この権利を勝ち取った先達の苦労は理解できないかもしれませんが、それまでの間に何度も苦い思いをしてきている弁護士にとっては、今の状況を手に入れるために尽力してくれた多くの弁護士たちに対する感謝の念はとても大きなものがあります。

そんな思いを持っているので、私自身は、マスコミ広告で過払い請求を宣伝して、多重債務者を集めている弁護士や司法書士に対しては、自分たちはたいした苦労もせずに今ある甘い果実を貪っているという印象しか持てず、被害者救済という目的ではなく、単に自分たちの金もうけのために過払い請求権のある多重債務者を漁っているとしか思えないのです。

それでも、そのようなマスコミ広告が、世間に「過払い」を取り返せると知らしめた意味はあったのかもしれません。それまで利息制限法の存在も知らずに、10年以上も真面目に返済を続けていた人が、利息計算をしてみると数百万円の過払いを請求できたという例も少なくありません。(実際に私が取り返した最大額は、数社の消費者金融に対して500万円を超える金額でした。)

ただ、一方で、消費者金融から借りていれば過払い請求ができると単純に勘違いする人が現れてきたこともあります。自分の返済総額が借りた元本にも満たないのに「過払い請求できませんか?」と相談をしてくる人もいて、そのように考えるようなレベルでは、消費者金融から借りた金が手元にあると幾らでも使ってしまうのは分かるような気がしてしまいます。

ここまで債務整理事件の歴史的なことを書いてきましたが、少し長くなってしまいましたので、ここから先は次回に譲ります。

次回は、債務整理事件が一時的に弁護士業界を潤したいわゆる「過払いバブル」について、弁護士のホンネの部分をお伝えしたいと思います。

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