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「弁護士業界」勝手に解説-「債務整理のお話し」(3)最終回 [「弁護士業界」勝手に解説]

今回は、債務整理のお話しの第3回として、テレビCMを行っている東京の弁護士と地元の弁護士のどちらに頼むのが良いのかということについて考えてみたいと思います。

このように書くと、私自身が地方の弁護士なので、地方の弁護士に頼む方が良いという結論になるのは明らかと思われるかもしれませんが、それがなぜなのかということを理解していただかないと、手前味噌で言っているとしか思えないでしょうから、まずは、東京の債務整理を中心としている事務所の仕事のやり方をご説明しましょう。
※なお、ここからの説明は、私自身が当該事務所の関係者から直接聞いたこともありますが、推測で述べていることもあります。その前提で、お読みください。

テレビCMを利用している多くの事務所は、CMを見た相談者からの電話による問い合わせに対して、事務職員(マニュアルに従って回答するオペレーターのような人たち)がマニュアルに従って所定事項を聞き取って事件を受け付けるという方法を取っています。(以前は受付だけでなく、そのまま郵送で契約書をやり取りして事件の受任までしていました。)

本来、弁護士の仕事は、依頼者ごとに異なる事情をくみ取ってその事情に最も合致した解決方針を提示して事件処理を進めるというプロセスで行う訳ですが、この手の事務所では、事件を類型化して事件処理もパターン化することで、弁護士が最初の方針決定の過程に関与するだけでなく、よほどのトラブルがない限り弁護士が依頼者と直接コンタクトすることなく業務が行われていました。

弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定しており、弁護士事務所の事務職員であったとしても、全く弁護士の関与なく事件の代理行為をした場合には、非弁護士が法律事務を扱うことを禁じている弁護士法の趣旨に反するのではないかという問題が生じました。

特にテレビCMなどで大量に顧客を誘引している事務所の場合、全国から来る事件依頼にいちいち弁護士が対応することは当初から予定していないビジネスモデルなのではないかという疑念は拭えません。

●日弁連の対応とその後
そこで、平成23年2月、日弁連は「債務整理事件処理の規律を定める規程」を制定して、弁護士が債務整理事件を受任する場合は、「あらかじめ、当該事件を受任する予定の弁護士が、当該債務者と自ら面談」して、債務の内容や生活状況等を聞き取らなければならないということを会員弁護士に義務づけました。(このような規程が定められたのは、逆に言うとそのようなことをせずに問題になった事例が少なからずあったということを現わしています。)

そこで、CMをやっている東京の事務所はどうしたかというと、札幌もそうですが、全国の主要な都市に支所を設立して、そこに事務所に入所したての新人弁護士を一人置いて、受任のための面談をやらせるということをしました。事務所によっては、面談だけそこにいる弁護士が行って、事件の処理は東京にいる事務職員が行っているという所もあったようです。

最近、地方都市で債務整理の相談会を行うというチラシが配布されているようですが、この日弁連の規程の趣旨をクリアするために面談だけは依頼者の地元で行って、事件を漁って行った後は事務所のあるところで処理するという手法です。依頼者にとっては事件委任のときだけでなく、その後も不安に思った時に弁護士が直接面談して対処する地元の弁護士に依頼するほうが安心なのではないでしょうか。

また、この原稿を書くにあたって、テレビCMをしている複数の法律事務所の報酬規定を見てみましたが、札幌の弁護士の標準的な金額よりも高めに設定されており、コスト面でも地元の弁護士に依頼する方が依頼者のためになることが多いといえるでしょう。

●マスダが考える法律事務所とテレビCM
私自身は、弁護士の仕事は依頼者の個別の事情に対応するオーダーメイドの業務(債務整理事件のようにある程度パターン化されたものもありますが)なので、テレビCMなどを利用して大量に依頼者を呼び込んで受任するという手法にはそもそもなじまないと思っています。

全国からの大量のニーズにきちんと対応するためには、大規模な事務所にして、全国各地に支所を設立してネットワークを構築しなければなりませんが、経済規模が小さいために法的紛争の価格も低くなりがちな地方では、事件を受任することで得られる弁護士費用の単価も紛争の価格に比例して低くなります。いわゆる過払いバブルがはじけた後では、収入面を考えると、首都圏の法律事務所が地方に多店舗展開するメリットは少ないので、今後はテレビCMの利用も減少していくでしょう。

以前、テレビCMを利用している法律事務所に批判的なコメントをツイッターに投稿したところ、「広告を出している事務所は、それだけきちんと経営しているから広告を出すことができるのではないか。」という反論を受けたことがありました。そんな方には、利益を上げている法律事務所と依頼者のためにきちんと事件に向き合っている法律事務所が必ずしもイコールではないということに気付いていただきたいと思っているところです。

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これまで、債務整理に関する解説を行ってきましたが、債務整理というテーマは今回で終わりにしたいと思います。
次回からは、債務整理にも関連するのですが、弁護士と司法書士、行政書士、税理士といった周辺の士業との業際問題について、弁護士の立場で考えていることをお伝えしたいと思います。

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