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法科大学院卒業 [弁護士・法律・裁判]

今年の3月末で北海道大学の法科大学院を卒業します。学生の話ではなく、私自身の話です。

「弁護士なのに法科大学院を卒業って何?」と思われる方もいると思うので説明しますと、平成21年4月から、札幌弁護士会の推薦で法科大学院の特任教授を拝命し、この度、晴れてその4年の任期が終了して、めでたく卒業という運びになったということです。

 特任教授マスダの担当科目:ローヤリング=クリニック                                               
私が法科大学院で教えていたのは、ローヤリング=クリニックという科目で、ローヤリングは弁護士という意味の「lawyer」に現在進行形の「ing」を付けた造語ですが、『弁護士として必要なスキルやマインドを教える』という科目です。クリニックは『法律相談実務を教える』科目で、この二つが合わさったのが私の授業でした。

毎回の授業の教材は年度初めに準備して用意しておくのですが、学生に事前レポートを出させていた関係で、授業準備はレポートの採点・添削や回答内容の分析など結構大変だったという思いがあります。授業を受ける側の学生も私の授業のほかにも並行して複数の授業を履修しているので、ほぼ毎回のレポートはかなりの負担だったようです。しかし、授業終了時に行う学生の授業アンケートでは、「レポートの課題は大変だったけど、実務についたときに役立つ知識を学べて良かった。」というような好評価をしてもらえたので、法科大学院の教員の務めは果たせたかなと思っています。

先週末は、日弁連主催の法科大学院の実務家教員交流集会で、授業内容の発表担当もさせてもらい、4年の任期が終了するこのタイミングで、自分の授業を振り返る良い機会を与えてもらいました。何事も同様だと思いますが、人に教えることを通じて学ぶことも数多くあり、この4年間の経験は自分の弁護士としての奥行を増すことにも役立ってくれていると信じています。

大学の教員生活を終えることで一番うれしいのは、書類の山を整理できることでしょうか。過去の授業の資料も、今後の授業に役立てられるかもしれないと思って取ってあったものが多数あり、これを思い切って廃棄できるのは、書類をなかなか処分できない性格の私にとっては精神衛生上非常にプラスの効果があります。学生の成績や個人情報に関わる資料など、センシティブな情報はシュレッダー行きで、これから少しの間、事務所のシュレッダーに活躍してもらうことになりそうです。

 法律実務家に求められているのは何か                                                      
私が授業の中で意識したのは、『法的トラブルは人間の営みとして発生するものなので、法律を知っているだけではうまく解決できない』ということを伝えることでした。私も、司法試験の受験勉強を始めるまでは、法律家の仕事は法律を知っていればやっていけると勘違いしていたところがあったのですが、弁護士のような法律実務家に最も求められているのは、人間や社会を理解することです。

このことに気付けなければ、いつまで経っても社会が求める法曹としては不十分だということを思っているのですが、若いうちはどうしても社会経験の不足から人の行動に対する理解が表層的になりがちです。その経験の不足を補うのに最適なのは、小説や人物の評伝、歴史書など一見法律と無関係な読書なのですが、これも時間がないとなかなか手が出せません。

弁護士のように当事者の代理人をする立場であれば、多少の無理があると感じても依頼者の意向を最大限に反映するような活動をしていれば大きなミスにはつながりませんが、裁判官のような判断者が経験不足で事実認定を誤ってしまうと、当事者に多大な迷惑をかけることになります。裁判所は、成績優秀な若くして司法試験に合格した人たちを採りたがる傾向があるのですが、採用の際には、法的知識だけでなく、社会や人をどれだけ理解しているかという尺度も取り入れてくれると良いと思っています。

批判の多い裁判員制度は、このような裁判官の社会経験不足による誤判を防ぐというのが導入のそもそもの狙いだったのですが、量刑に対する裁判員の負担にばかり目が行ってしまうのは残念なことです。
私たちのところに持ち込まれる法的紛争は、過去にあった事実がどのようなものであったのかを解明できれば、結論は自ずと決まるものがほとんどです。その過去の事実を証明するのが難しいために紛争が長期化するのです。

私の授業では、そのようなことを学生に理解してもらい、事実を見る目を養うことの重要さを伝えて来ました。事実を証明するための技術的な指導ももちろんしているのですが、実際の事件は教科書通りに起こってはくれませんので、教科書的な事例はあくまでも一例に過ぎません。したがって、実際に目の前にある事案に適切な弁護活動は、その都度、弁護士が自分の責任で決断して、依頼者に説明し、納得してもらって行動に移す必要があります。そのためには、弁護士自身の全人格的な能力が問われることになるのです。

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私がこの授業で伝えたかったことを本当に理解して法科大学院を卒業した、あるいは卒業時には理解していなかったとしても、実務を行う中で私が伝えたかったことを実感してくれる、そんな履修者がどれくらいいるのかは、今の時点では分かりません。ただ、いずれにしても、私の授業を受けた学生たちが、より良い法曹として社会に貢献してくれることを心から願っています。


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