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11・29 札幌弁護士会臨時総会 [弁護士・法律・裁判]

2011年11月29日17:30から、札幌弁護士会の臨時総会が開催されました。

メインの議題は「法曹人口・法曹養成制度に関する決議の件」と題されていますが、その骨子は司法試験合格者数1000人程度を目標に司法試験合格者を段階的に減少させ、実施状況を検証しつつ適正な合格者数を検討することを政府に求める決議をするというものです。

なぜこの時期にこのような議題で臨時総会を開催しなければならなくなったのか、一般の方は分かりにくいかもしれませんので少し説明します。

話は、2001年6月に、当時の小泉構造改革の一環として、「司法制度改革審議会意見書―21世紀の日本を支える司法制度」が発表され、その中で「国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼に応えうる司法を実現すべきという視点」から法曹人口について、2010年ころまでに司法試験合格者数を年間3000人にすることを提言したことから始まっています。

この3000人論は、「法曹に対する需要は量的に増大するとともに、質的に申立人一層多様化・高度化していくことが予想され」「国民が必要とする質と量の放送の確保・向上こそが本質的な課題」であり、「司法試験合格者数は社会の要請に基づいて市場原理によって決定されるべきである」という前提から出されたものです。

そこで、今回の決議なのですが、現実には司法試験の合格者は2007年以降2100人前後にとどまっており、3000人には遠く及ばないにもかかわらず、弁護士の増員ペースが弁護士業界の吸収力をはるかに超えていることから、司法修習を終了しても就職先のない弁護士資格者がここ数年加速度的に増えているという現実を見据えてのものです。

どうしてそうなったかというと、上記の審議会意見書にあった「法曹に対する需要は量的に増大する」という前提が全く現実のものとなっていないからです。弁護士の業界は、ここ数年「過払バブル」と揶揄されるような状況があって、多くの弁護士はそれなりに恩恵を受けていましたが、それはまさにバブルであって、過払訴訟を除いた民事訴訟の件数は横ばいか若干の減少傾向にありました。

この過払バブルのおかげで、ここ数年は大量に業界に参入してくる新人弁護士の就職口もある程度は確保されてきましたが、バブル終焉が近づいた昨今では、債務整理専門で大量に弁護士を雇用していた事務所が若手弁護士との契約を打ち切るだけでなく、その他の多くの事務所も、新人を採用してあげたくても、事務所を維持するのがやっとの仕事量では、リスク回避のために採用を見送るしかないという状況があります。

折から、司法修習生は国から給与を支給される給費制から、生活費に不足する修習生には国が無利息で給与相当額を貸与するという制度が始まろうとしていますが、司法試験受験資格を得るために法科大学院の学費負担をしたうえで、更に修習期間中も無給、加えて、弁護士資格を得ても就職できるかどうかも分からないというのでは、有能な若者たちが私たちの業界を目指すインセンティブは極めて低いものになってしまいます。

その一つの証左として、法科大学院制度開始のころと比較すると、法科大学院志望者の数は4分の1近くまで減少しており、司法試験受験者の数も半分程度まで減少しています。(受験者数の減少が少ないのは、前年度以前に卒業して不合格だった人たちが受験しているからです。)

このままでは、弁護士が多くの有能な若者が目指したいと思う職業ではなくなり、一部の経済的に恵まれている人たちが、今までよりもはるかに楽な競争試験をクリアして弁護士資格を取得するという時代が訪れかねない状況にあるのです。(このような人たちが、弁護士の多数を占める社会を一般の方々が望むでしょうか?)

弁護士が司法試験合格者の減少を求めると業界エゴという批判を受けるのはある意味仕方のないことです。もちろんそのおかげで既存の弁護士にとって厳しい競争が幾分か緩和される面があることは否定できません。

しかし、今日、多くの弁護士が声を上げているのは、自分たちのこともさることながら、後に続く世代がきちんと社会からの負託に応えうるだけのレベルを維持して、社会正義の実現と基本的人権の擁護という弁護士の使命を担い続けられるかという根本に対する危機感からです。

札幌弁護士会の臨時総会は、4時間以上にわたる審議の結果、圧倒的多数で1000人決議案を可決承認しました。

この決議が通ったからといって、国の制度が簡単に変わる訳ではありませんが、弁護士自身が現状について声を挙げなければ、実態は社会に伝わりません。ここからがスタートラインです。

皆さんも、遠い弁護士業界のことと思わずに、社会のインフラとしての弁護士という視点でこの問題をお考えいただけると、この決議を挙げた意味をご理解いただけるのではないかという気がしています。


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ねずみ講は絶対破綻するのにどうして騙されるのか [ニュース・社会]

「年金たまご」と称して会員から多額の金を集めネズミ講を営んだとして健康食品販売会社「ライフ・アップ」の元社長が無限連鎖講防止法違反の疑いで逮捕されました。
(朝日新聞HPより ※リンク切れのため、リンク削除しました)

無限連鎖講(いわゆる「ねずみ講」)は、自分の下の出資者を勧誘すればするほど、その出資の一部が自分に対する配当となる仕組みで、先に参加すればそれだけもらえる配当は多くなりますが、参加者をネズミ算的に増やしていかなければいつかは破たんします(そのうち必要な会員数が地球の人口を上回ります)から、まともな経済行為と言えないことは明らかです。

ねずみ講は、もともとの形は商品を伴わず、単に子会員、孫会員を増やして出資を集めるだけのものでしたが、それが無限連鎖講防止法に違反するということで、隠れ蓑として今回の健康食品販売のような形式をとることが多くなっています。

ねずみ講といわゆるマルチ商法は似ているので勘違いされやすいのですが、マルチ商法(マルチレベルマーケティング)という営業手法は、欧米では優れた販売方法という評価もあって、わが国でも違法ではないという裁判例もあります。

両者は、仮に子会員、孫会員が増え続けなくてもビジネスとして成り立つかどうかという違いがあり、事業者が適正な利潤を得たうえで、顧客にとって価値のある商品が適正な価格で提供されているかどうかということが指標になるのでしょう。

今回の事件のように健康食品などを商材として扱う方法は、マルチまがい商法と言われ、ねずみ講の隠れ蓑として使われる脱法行為なので、ねずみ講を取り締まる無限連鎖講防止法違反とされたわけです。

今回被害にあった方たちが、そのような仕組みと分かって出資したのかどうかは分かりません。おそらく、仕組みは分からずに、高配当が得られるという甘い言葉に乗っかっただけの人がほとんどだと思います。我が国の景気は先の見えない状況にあり、高齢者が資産を運用しようとしても運用利益は微々たるもので、将来に対する不安から資金を投入した被害者も少なくないと思います。

しかし、この不況の時代に、そんなうまい話がある訳がないのです。勧誘する人たちは、自分の下に子会員、孫会員が増えるたびに配当が増えますから、知人を誘って被害者を増やします。誘った時は、自分の利益だけでなく、誘った相手にも利益を得てもらいたいという気持ちから声をかけていることも多いと思いますが、このように実態が明るみに出れば、それまでの友人関係、親せき関係は崩壊して孤独な人生が待っています。

ねずみ講の被害は歴史的に何度も繰り返されているので、周囲にその危険性を知っている人が全くいないということはないと思うのですが、欲に目がくらむということは恐ろしいことです。

なお、ねずみ講の主催者でなくても、ごく初期に参加した人たちは、出資額をはるかに上回る利益を得ている可能性があります。もちろんその利益は、後から参加した会員の被害によってもたらされているのですから、刑事責任は免れたとしても、民事上の損害賠償責任を負わされる可能性もあるということも知っておいた方が良いでしょう。


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タグ:ねずみ講
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為替デリバティブの恐怖-その実態と対策(5) [企業経営・経済]

顧客企業が金融機関に対して為替デリバティブ取引の損失の深刻さを訴えても、金融機関側が直接に自らの非を認めることはまずありません。これは、担当者自身は契約の不合理さを感じていたとしても、もともと金融機関側が作った契約スキームですから、その内容を自ら否定することはできないからです。

そして、基本的には「契約自由の原則」もありますので、契約してしまった以上はその内容を履行してもらう必要があるというスタンスを崩すこともできないからです。

また、前回指摘した契約の無効原因についても、顧客企業側から見た見方であって、この主張が裁判所で認められるか否かは予断を許さないところがあります。金融機関側も、仮にこの契約に無効原因があるというような判決が裁判所で出されてしまうと、それまで不満を持ちながら敢えて口にしなかった多くの契約者が一斉に金融機関に損害賠償の請求をすることになるので、徹底抗戦することが予想されるからです。したがって、この契約に関する訴訟が提起された場合には、途中で和解が成立することがなければ最高裁まで行かざるを得ないような事件になってしまいます。

しかし、そのような長期化は、この取引によって資金繰りが悪化している顧客企業も望みませんし、金融機関側にとっても、もともとこの契約を勧めた相手は優良取引先が多いので、深刻な争いになってその取引先を失うことは避けたいという思惑もあります。

そのような双方の思惑もあって、為替デリバティブによる損失については、損失の全部ではないにしても、一部を金融機関側が負担するという形で解決する例が少なくありません。(契約当事者それぞれの事情がありますので、必ず負担してもらえるという訳ではありません。)

ただ、金融機関側も、当事者間の任意の交渉で損失を負担するのは、「損失補てん」として禁じられていますので、裁判所あるいはこれに準じた第三者機関の関与のもとで、合理的な解決案の提示を受けて解決するのでなければならないということになっています。

その手続きを担っているのが、全国銀行協会の「あっせん委員会」やFINMAC(証券・金融商品あっせん相談センター)です。(FINMACで斡旋を受けられる金融機関は限られています。)

これらの機関を利用して話し合いで解決するというのが、現時点では最も有効な解決策と思われますが、相手の金融機関がメインバンクというような場合には、今後の資金繰り等に関する別の考慮も必要になる可能性もあります。

それらのことも含めて最も良い解決策を検討するためには、一人で考えても考えがまとまらないでしょうから、守秘義務を負っている経験のある弁護士に相談するのが、解決に向けた最初のステップになると思います。

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為替デリバティブの恐怖-その実態と対策(4) [企業経営・経済]

為替オプション取引によって顧客企業に発生した損害は、裏を返せば金融機関の利益ということができます。為替オプションは金融機関と顧客との相対取引ですから、一方当事者が損をすれば相手方が得をするという関係にあるからです。

もちろん、金融機関側はこの仕組みを作って運用するために様々なコストをかけていますし、ときには顧客企業との特定の取引のために実際に外貨を売買することもありますので、顧客企業の損失が丸々金融機関の利益になるというのは言い過ぎですが、それに近いものが金融機関にもたらされていることは間違いありません。
そうすると、顧客企業が被った損害は金融機関から返してもらうしかありません。

かといって、金融機関に対して直接損害を返して欲しいといっても、契約関係書類には顧客企業にリスクがあることは記載されていますし、そもそも金融機関が顧客の損害について返金することは「損失補てん」として禁じられているという回答がなされることになります。

自由主義の国では「契約自由の原則」があって、どのような契約でも契約当事者が納得して契約したものであれば、その契約は有効であり、契約に定められている効果を覆すことは原則としてできないことになっています。しかし、この「契約自由の原則」を無限定に認めてしまうと、契約当事者間に情報の格差がある場合などには、一方当事者が十分な判断資料を持たないままに不利益な契約を結ばされてしまうこともありますし、あるいは契約外の部分で大きな力関係の差がある場合などには、不利だと分かっていても不公正な契約書に判をつかなければならないこともあります。

そのため、「契約自由の原則」も無限定に認めることはできず、公序良俗に反する契約は無効とされ(民法90条)、あるいは経済的弱者保護の観点から事業者と消費者との契約についてルールを定め、そのルールを守らない契約はその効力を否定されるという規定(強行法規)もあります(消費者契約法や利息制限法など)。公序良俗に反する契約の例としては、正義の観念に反する行為(賭博行為etc…)や個人の自由を極度に制限する行為(愛人契約etc…)、暴利行為(不当に高額な報酬契約etc…)などが挙げられます。(私は、今問題になっているスキームによる為替オプション取引は、極めて賭博性の高いものではないかと考えています。)

そのほかに、契約の一方当事者に契約の重要な要素に関する錯誤がある場合も契約は無効ですし(民法95条)、詐欺や強迫によって締結させられた契約は取り消すことができます(民法96条)。

問題の為替オプション取引もこれらの条項をうまく適用することで無効あるいは契約の取消しの効果を得られる可能性はあると考えられます。

次回は、これらの法的効果を主張したときの金融機関の対応についてまとめてみます。

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為替デリバティブの恐怖-その実態と対策(3) [企業経営・経済]

為替デリバティブは、本来外国との貿易の際に外貨決済を必要とする事業者が、為替リスクを回避するために開発された金融派生商品です。したがって、その商品を販売する相手は、このような為替リスクを負う恐れのある事業者ということになりますが、現在問題となっている為替デリバティブ契約の中には、かなりの割合でこのような実際の必要性がない事業者が契約している事案があります。

金融機関は、直接外国と貿易していなくても、外国産の原材料などを使用して事業を営んでいるのであれば、為替が円安になれば、それだけ仕入れる原材料の価格が上昇して損失を被るおそれがあるので、その損失をカバーするために為替デリバティブ取引を行うことは為替リスクの回避に繋がるという理屈で顧客企業に売り込んだのです。しかし、直接貿易していないのであれば、為替リスクを負うのは海外から直接仕入れる中間の業者であり、その中間業者からどのような価格で購入するかは国内取引における様々な要素で決まることですから、為替リスクを直接負担するものではありません。銀行の説明は、詭弁と言っても良いような不合理なものでした。

為替デリバティブの契約をしてしまった顧客企業の多くは、相手の金融機関が自社のメインバンクであったり、事業資金の融資を受けていたりする関係で、断わりにくい立場にありました。それに加えて、良く分からないけど為替リスクを回避することができ、手数料も無しということであれば、今後の取引の関係もあるので、お付き合いで契約しても良いだろうという考えで契約しています。契約の際渡される説明書面には、顧客企業がリスクを追う可能性があると書いてはありますが、金融機関の担当者はそのリスクの大きさについての説明はしませんから、顧客企業はリスク回避のことしか考えずに契約してしまっているのです。しかし、現在現実化している損失の甚大さを考えるならば、お付き合い程度の意識で契約できるようなものでないことは明らかです。

平成19年10月1日に施行された「金融商品取引法」では、「当該金融商品取引契約の内容その他の事情を勘案し、投資者の保護を図ることが特に必要なものとして政令で定める」一定の金融商品取引契約について「締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」(不招請勧誘)は禁止されています(金商法38条3号)。そして、同年4月13日に公表された金融商品取引法施行令案では、不招請勧誘を禁止する取引として「政令で定めるもの」のなかに、店頭デリバティブ取引としての「通貨の売買等に関するオプション取引」が明記されているのです。(金融商品取引法施行令案16条の4第1項)

つまり、現在問題になっている為替デリバティブ契約については、平成19年10月1日以降は、契約をする気のない事業者に対して金融機関の方から勧誘してはいけないと法律で禁止されているのです。それほど危険な取引について、十分な説明をしないで契約させた金融機関の責任は重いといわざるを得ないでしょう。

次回は、為替デリバティブ取引によって発生した損害の回復について取り上げます。

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