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新年早々新年度への引継ぎの話が来ました。 [弁護士・法律・裁判]

新しい年を迎えて半月が経とうとしていますが、今年は暦のめぐりのせいで、6日が仕事始めだった方も多かったと思います。
私も、今年の正月は、年末から9連休でその間ほとんど事務所に顔を出さなかったのですが、こんなにゆっくりしたのは思い返しても弁護士になってから初めてかもしれません。

そして、成人の日を含む三連休があったので、月の半ばまで来ているのに実際に働いたのは5日だけなのですが、新年早々いろいろな書類が届き、正月気分はあまり残っていない気がします。

 ■え?もう?!4月以降の引継ぎのための書類が届いた~2月には始まる弁護士会委員会の人事

そんな中、届いた書類のなかに、1月だというのに、4月からの新年度に向けて各種引継のための情報提供を求める書類がいくつかあります。

札幌弁護士会の場合には、4月が新年度ではありますが、2月上旬の役員選挙が終わると、次年度の会長副会長が600人いる会員をどの委員会に配属するかといった人事に取り掛からなければなりません。

会員は、若手の会員であれば2~3の委員会に、中堅以上の弁護士でもたいていはどこかの委員会に配属されます。その委員会の構成をどうするかというのは、委員会活動がうまく機能するかどうかにもかかわるので、人事を決めるときにはかなり頭を悩ませます。

4月の頭から実際に活動してもらうためには2月中に委員会の各委員長を確定して、3月10日ころまでには次期の委員会構成を完成させておく必要があります。そのため、選挙に当選した次年度の会長・副会長は、直後から毎週のように現在の会長・副会長と業務引継のための会議を行い、そのうえで次期の会長・副会長だけで次年度の委員会構成をするので、次年度の会長・副会長は事実上2月の選挙直後から始まっているといっても良いような状況になります。

私も、今から10年前の平成16年度に副会長だったのですが、現在はその時よりも弁護士会を取り巻く環境は厳しさを増し、委員会の数も増えているので、会長・副会長を担う皆さんはかなり大変な思いをすることになります。

 ■弁護士会の役員の任期は1年~結構ハードな職務「弁護士会役員」

たまに、私が昔副会長をやっていたことを知っている人から、「副会長はまだやっているの?」といった質問をされることがあります。弁護士会の役員の任期は1年なので当然続けている訳もないのですが、一般の方には、弁護士会の役員はどこかの業界団体の会長・副会長のように、本業を担う代わりの人材が社内にいるような会社と同列に思えるのかもしれません。

しかし、弁護士の場合は、本業もプレイングマネージャーとして行わないと事務所が維持できないので、何年も業界のために役員を続けることは死活問題にもなりかねませんので、そんな質問を受けた時には、「何年もやったら事務所が潰れちゃいます。」といったお答えをしています。

そんな、ハードな役割の弁護士会の役員なので、引き継ぐ際にはできるだけ次年度に負担を掛けないようにという配慮から、1月中に人事のための情報を集めておきたいという配慮で冒頭のような書類が届くことになります。

弁護士会に限らず、役員が1年交代の組織の場合には、年度開始前半年から3か月くらいから準備を始めて、年度終了後1~2か月は決算などの業務を行わなければならないので、実質は1年半くらいの任期と理解して取り組む必要がありそうです。

実は、私も、今年の7月から所属するロータリークラブの会長を引き受けることになっているのですが、昨年12月から次年度の理事の皆さんと被選理事会を行って準備をしています。

いろいろと大変なこともありますが、そういう年回りになったということと、誰かがやらないと組織が成り立たないという現実を踏まえて、責任を果たしていきたいと思っています。

組織に所属している人たちがみなさんこのような意識を持ってくれると、組織の将来も心配ないのですが、最近は帰属意識の希薄な会員を見ることも少なくないので、その辺の意識をどうすれば変えられるのか、ちょっと気になっているところです。

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判決で請求が認められても実際に回収できるとは限らないのですが…2 [弁護士・法律・裁判]

前回のブログでは、平成25年7月4日に判決がでた、神戸地方裁判所の自転車事故の損害賠償請求の判決を例にとり、多額の損害賠償請求をされた側が支払えないとなった場合どんな方法を取る可能性があるのかお話しをいたしました。
今回はその続きです。

 ■ マスダが考える~「なるべく多く」回収するための作戦                                         
このような裁判の記事を見て思うのは、判決で認容されたとしても、実際にその認容額を回収することの困難さを一般の方はどの程度理解しているのだろうかということです。

我々弁護士は、このような損害賠償請求を依頼したいというご相談をいただいたときに、法的に請求が認められる可能性とともに、実際の回収可能性を併せて検討して方針を立てます。
※この事案であれば、相手方の支払い能力や賠償保険契約の有無を確認します。

訴訟をやってぎりぎり追いつめてしまって、ある程度の請求を認容する判決を取ったとしても、自己破産されてしまう(※非免責債権については前回のブログ参照)ようであれば、企業のようにその分を損金処理という方法で役立てられれば別ですが、個人の依頼者にとっては、結果として何もならないことになってしまいます。

企業相手の請求についても、相手方がいつ倒産するか分からないという状況であれば、裁判をやれば100%勝てるという事案でも、預貯金や事業用資産を差押えて追いつめてしまうのは、倒産の引き金を引くことにもなりかねないので、慎重にならざるを得ません。

そうなっては元も子もないので、強硬な取り立てをせずに、分割で良いから少しずつでも支払ってもらう方向で協議を進める方針を選択することもありますが、そんなやり方を生ぬるいと感じて納得されない依頼者も稀にはいらっしゃいます。

依頼を受けた弁護士としては、依頼者の最大限の利益を確保するために、債権回収までの全プロセスを見越してどのような手段を採用すべきかを検討しているのですが、そんな悩ましい事情をすんなり理解していただけると、解決の近道となり、迅速な回収につながると思うのですが・・・。


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判決で請求が認められても実際に回収できるとは限らないのですが…1 [弁護士・法律・裁判]

平成25年7月4日、神戸地方裁判所で、事故当時小学校5年生の少年が運転する自転車にはねられ、意識不明の状態になってしまった女性とその女性に保険金を支払った保険会社が少年の母親に対して損害賠償を求めた裁判の判決が出され、合計約1億590万円の請求に対して約9520万円(内訳は、被害女性に約3520万円、保険会社に約6000万円)の請求が認容されました。

 ■ 増えてきた自転車利用者~増加する「自転車」の交通事故                                    
私も最近は、事務所前のポートからシェアリング自転車「ポロクル」を利用して外出することが多くなっており、安全運転を心掛けているつもりですが、周りを見渡すと「危ないなー」と思わざるを得ない自転車走行は少なくありません。

自動車であれば、最低限の賠償義務を担保するために自賠責保険の加入が法律で義務付けられていますが、それだけでは賠償額全額をカバーすることはできないので、多くの運転者は任意保険の契約もして、万が一事故を起こしてしまったときに備えます。

しかし、自転車の場合には、自転車事故の危険性がようやく認識されてきたという現状ですから、運転者が賠償保険に加入しているという例はまだ多くはありません。

ただ、現実には、この判決の事故のように、自動車事故と変わらない重大な結果を生じてしまう自転車事故は十分に起こり得ることです。

 ■ 高額な損害賠償請求~支払いができない場合、どうなる?!                                
上記の訴訟では、被害者が被った損害全体のうち、被害者が契約していた保険から支払われた保険金分について、その保険会社が加害者に対して求償請求として支払いを求め、保険でカバーされない部分については被害者本人(実際には被害者の成年後見人となった夫)が損害賠償として請求している訳ですが、判決で認容された合計9520万円は個人が支払いをするには極めて高額の賠償額ということになります。

この判決が確定すると、被告になった少年の母親には認容された金額を支払う法的義務が発生してしまいますが、その金額を支払うことが事実上無理な状況であれば、おそらく自己破産の申し立てをすることになるのでしょう。
※もちろん、被告の母親が賠償保険の契約をしていればその保険でカバーされることもありますが、この記事からはその辺りの事情は分かりませんので、「賠償保険に入っていなかった」と仮定し、以下の内容を書かせてもらいます。

自己破産して免責の決定を受ければ、それまで保有していた財産の大半は失われてしまいますが、その代わりに法的な債務を支払う義務は免除されますので、この判決があったとしても、実際には支払う必要がなくなってしまいます。

**自己破産における非免責債権について**********************************
非免責債権とは、裁判で破産・免責申立をしても「免責が認められない(=支払いをしなければならない)」債権のことです。
非免責となる債権の中に「損害賠償債務」がありますが、これは
  ・破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条1項2号)
  ・破産者が故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく
   損害賠償請求権(破産法253条1項3号)
が対象となります。本件についてはいずれにも該当しないと考えて良いと思われます。
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そうなると、保険会社は判決で認容された約6000万円を回収不能として損金処理をして法人税の負担を軽減させられますが、被害者本人は判決で認められた金額の支払いを受けられずに、何のために裁判をやったのかということになってしまうのかもしれません。

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今回は、「賠償金を支払う側」が「支払いが出来ない状態」になったときどうするのかを書きましたが、次回のブログでは、「なるべく多く」賠償金を回収するための作戦について書いてみようと思います。


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法科大学院卒業 [弁護士・法律・裁判]

今年の3月末で北海道大学の法科大学院を卒業します。学生の話ではなく、私自身の話です。

「弁護士なのに法科大学院を卒業って何?」と思われる方もいると思うので説明しますと、平成21年4月から、札幌弁護士会の推薦で法科大学院の特任教授を拝命し、この度、晴れてその4年の任期が終了して、めでたく卒業という運びになったということです。

 特任教授マスダの担当科目:ローヤリング=クリニック                                               
私が法科大学院で教えていたのは、ローヤリング=クリニックという科目で、ローヤリングは弁護士という意味の「lawyer」に現在進行形の「ing」を付けた造語ですが、『弁護士として必要なスキルやマインドを教える』という科目です。クリニックは『法律相談実務を教える』科目で、この二つが合わさったのが私の授業でした。

毎回の授業の教材は年度初めに準備して用意しておくのですが、学生に事前レポートを出させていた関係で、授業準備はレポートの採点・添削や回答内容の分析など結構大変だったという思いがあります。授業を受ける側の学生も私の授業のほかにも並行して複数の授業を履修しているので、ほぼ毎回のレポートはかなりの負担だったようです。しかし、授業終了時に行う学生の授業アンケートでは、「レポートの課題は大変だったけど、実務についたときに役立つ知識を学べて良かった。」というような好評価をしてもらえたので、法科大学院の教員の務めは果たせたかなと思っています。

先週末は、日弁連主催の法科大学院の実務家教員交流集会で、授業内容の発表担当もさせてもらい、4年の任期が終了するこのタイミングで、自分の授業を振り返る良い機会を与えてもらいました。何事も同様だと思いますが、人に教えることを通じて学ぶことも数多くあり、この4年間の経験は自分の弁護士としての奥行を増すことにも役立ってくれていると信じています。

大学の教員生活を終えることで一番うれしいのは、書類の山を整理できることでしょうか。過去の授業の資料も、今後の授業に役立てられるかもしれないと思って取ってあったものが多数あり、これを思い切って廃棄できるのは、書類をなかなか処分できない性格の私にとっては精神衛生上非常にプラスの効果があります。学生の成績や個人情報に関わる資料など、センシティブな情報はシュレッダー行きで、これから少しの間、事務所のシュレッダーに活躍してもらうことになりそうです。

 法律実務家に求められているのは何か                                                      
私が授業の中で意識したのは、『法的トラブルは人間の営みとして発生するものなので、法律を知っているだけではうまく解決できない』ということを伝えることでした。私も、司法試験の受験勉強を始めるまでは、法律家の仕事は法律を知っていればやっていけると勘違いしていたところがあったのですが、弁護士のような法律実務家に最も求められているのは、人間や社会を理解することです。

このことに気付けなければ、いつまで経っても社会が求める法曹としては不十分だということを思っているのですが、若いうちはどうしても社会経験の不足から人の行動に対する理解が表層的になりがちです。その経験の不足を補うのに最適なのは、小説や人物の評伝、歴史書など一見法律と無関係な読書なのですが、これも時間がないとなかなか手が出せません。

弁護士のように当事者の代理人をする立場であれば、多少の無理があると感じても依頼者の意向を最大限に反映するような活動をしていれば大きなミスにはつながりませんが、裁判官のような判断者が経験不足で事実認定を誤ってしまうと、当事者に多大な迷惑をかけることになります。裁判所は、成績優秀な若くして司法試験に合格した人たちを採りたがる傾向があるのですが、採用の際には、法的知識だけでなく、社会や人をどれだけ理解しているかという尺度も取り入れてくれると良いと思っています。

批判の多い裁判員制度は、このような裁判官の社会経験不足による誤判を防ぐというのが導入のそもそもの狙いだったのですが、量刑に対する裁判員の負担にばかり目が行ってしまうのは残念なことです。
私たちのところに持ち込まれる法的紛争は、過去にあった事実がどのようなものであったのかを解明できれば、結論は自ずと決まるものがほとんどです。その過去の事実を証明するのが難しいために紛争が長期化するのです。

私の授業では、そのようなことを学生に理解してもらい、事実を見る目を養うことの重要さを伝えて来ました。事実を証明するための技術的な指導ももちろんしているのですが、実際の事件は教科書通りに起こってはくれませんので、教科書的な事例はあくまでも一例に過ぎません。したがって、実際に目の前にある事案に適切な弁護活動は、その都度、弁護士が自分の責任で決断して、依頼者に説明し、納得してもらって行動に移す必要があります。そのためには、弁護士自身の全人格的な能力が問われることになるのです。

===============
私がこの授業で伝えたかったことを本当に理解して法科大学院を卒業した、あるいは卒業時には理解していなかったとしても、実務を行う中で私が伝えたかったことを実感してくれる、そんな履修者がどれくらいいるのかは、今の時点では分かりません。ただ、いずれにしても、私の授業を受けた学生たちが、より良い法曹として社会に貢献してくれることを心から願っています。


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司法試験合格発表‐予備試験制度に対する違和感 [弁護士・法律・裁判]

9月11日は今年の司法試験の発表日でした。北大で私の授業を受講した学生たちの動向が気になり、朝から少しそわそわした気分でいましたが、発表は午後4時からなので慌ててもしょうがないなと思って、当日はぼちぼち仕事をしていました。

試験の結果は既に報道もされているので、ご存知の方も多いと思いますが、2021年以降下がり続けていた合格者数は昨年の2069名(旧試験合格者数6名を含む)から、2102名と若干増加し、下がり続けていた法科大学院卒の受験生対象の新司法試験の合格率も24.62%(予備試験組も合わせると25.06%)と初めて上昇に転じました。

●2012年の新司法試験の合格率が上昇したワケ
この原因は、最低2年間法科大学院で学んだ後でなければ司法試験を受験できないという制度に対して、法科大学院修了後の合格率が当初いわれていた7割程度から程遠い低水準にとどまっていたことに加えて、合格者数を大量に増やしたことによって、『司法試験に合格して司法修習を終了しても就職先を見つけることができないという現実』が学生の間に認識されて法曹に対する魅力が薄れ、法科大学院の志願者数が減少したために、受験者数が減少したことが影響しているものと思われます。

現実に、地方の法科大学院では、定員数の半数にも満たない学生数しか確保できないところも現れてきており、文部科学省の方では、これらの法科大学院に対する補助金のカットなどの兵糧攻めによって、成績不良の法科大学院の退場を求めるようになってきています。

日弁連は、司法試験終了者の就職難の問題などから、司法試験合格者数を1500名まで減少させるよう提言していますが、それでも多すぎるという弁護士の声は少なくありません。現実に、昨年司法試験に合格して現在司法修習中の修習生で、今年の12月末に司法修習を終了しても勤める法律事務所が決まっていないという人の数は、約2か月前の集計で全国的に400名ほど、最終的に100名以上が就職できないのではないかとさえいわれています。

そのようなことを、法曹界以外の人に話しても、「就職できないのは自己責任なのだからしょうがないじゃないか。」と言われることもありますが、法曹界の先輩としては、私たちの後輩として司法試験に合格してきた人たちが就職できないことを「自己責任」と突き放すことも忍びないところで、先輩弁護士は心を痛めています。

こんな事態になるなら、司法試験の合格者を絞ってでも就職先の確保に困らないようにした方が、優秀な人材が法曹界を目指す障害にならないのでよいのではないかと思うのですが、そのような話も、競争激化を回避するための業界エゴと言われるので、なかなか声高には言えません。

●法科大学院と予備試験制度
そんな状況なのですが、今年の司法試験は法科大学院を終了しなくても受験できた旧司法試験が終了して、新司法試験に一本化した初年度です。ここ数年は新旧の司法試験が併存していたので、司法修習生も旧○○期、新○○期と呼んでいたのが、新旧が取れて○○期という呼称に一本化されます。

ところが、今年は、予備試験制度の合格者が受験した初年度でもあり、やはり異質な受験生・合格者が誕生しました。

予備試験は、時間や金銭上の都合その他の理由により法科大学院に行くことが困難な志望者に対して司法試験の受験資格を与える目的で設けられた制度で、昨年初めて予備試験が実施されました。昨年の予備試験の合格率は1.78%とかなりの狭き門ではありましたが、今年の司法試験では、この予備試験合格組が85名受験して短答式試験合格が84名、最終合格が58名と、全体よりも遥かに上の68.24%という高い率で合格しました。

予備試験制度は、法科大学院に行くことが困難な人に対する救済のための制度だったはずなのですが、受験資格に制限を設けなかったために、実際には大学や法科大学院に在学中の学生が受験しており、今年の司法試験最終合格者のなかには大学生が26名、法科大学院生も8名含まれています。

受験生の個別事情までは分かりませんが、この34名のうち、時間や金銭上の都合その他の理由により法科大学院に行くことが困難だった志望者がいたとは考えにくいところです。彼らにとっては、2年間という時間と多額の学費を費やして法科大学院に通って受験資格を得るよりも、予備試験というバイパスができたので、これを利用して短期間に効率的に合格することができたということなのだと思います。

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法科大学院教育で学ぶ内容は、法科大学院によってかなりばらつきがあるともいわれていますが、それでも学部の教育と実務を繋ぐことが期待され、司法修習の期間が短縮され、法曹実務の基礎を学ぶ前期修習が廃止された現状では、法科大学院で学ぶことがいきなり裁判・検察・弁護といった実務修習に臨まざるを得ない司法修習生の基礎知識として必要なことも少なくありません。

おそらく、予備試験という狭き門を突破してきた合格者は優秀な人が多いのかもしれません。ですから、法科大学院で学ぶ程度のことは、多少の出遅れがあったとしても修習期間中に簡単に追いつけると思われるかもしれません。そして、大学や法科大学院在学中に合格していれば、合格年齢も平均よりはかなり若くなりますので、法曹界のエリートという見方をされるのかもしれません。

しかし、そのような評価は、予備試験制度を設けた趣旨とはかけ離れたものであり、おそらく多くの法曹関係者にとっても強い違和感を抱かせるものになるはずです。そのような意味で、法科大学院修了者とは異質な予備試験組の合格者が今後どのような見方をされるのかはとても気になるところです。


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