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論語の「辞は達するのみ」はどういう意味でしょう [論語・孔子]

以前もブログに書きましたが、今年の7月から4週連続で論語に関するセミナー講師をする関係で、現在、論語を猛勉強しているところです。

論語は512の短文が全20編で構成されています。短文と言っても長短あるのですが、その中でも最も短いものの一つとして衛霊公篇に「辞達而巳矣」という孔子の言葉があります。「辞は達するのみ」と読みますが、その意味は研究者によって必ずしも一致している訳ではありません。

「文章を書くなら達意であれ」という意味と解する学者もいれば、「言葉は通じればよいのだ」という意味という学者もいます。逆に、「どんなに立派な言葉も相手に通じなければ意味がない」という解釈もあるようです。

 マスダが考える「辞達而巳矣」の解釈                                      
私自身は、孔子のもう一つ有名な言葉に「巧言令色鮮(すくな)し仁」というものがあるように、孔子は言葉を飾ることに否定的な評価をしていたようなので、「言葉は通じればよいのだ」という解釈が良いのかなと思っていますが、これを私たちの仕事に置き換えたらどうでしょうか。

私たち弁護士は、弁舌さわやかで口達者というイメージがあるかもしれませんが、実は仕事のかなりの部分の時間は黙々と文書を作成しています。法律相談で相談者と話したり、事件関係者と面談を行っていろいろな話を聞きだしたりすることもありますが、そのようなときも、頭の中では、会話の中から事実のエッセンスを引き出して過去にあった事実を再構築するなどの作業をしており、それが後々文書を作成する際の下地となりますから、これらの会話も文書作成の下準備の意味を持っているのです。

私たちが文書を作成する際に最も重視していることは何かというと、やはり相手にこちらの真意を的確に伝えることです。裁判所に提出する書面も、事件の相手方に送る内容証明郵便も、こちらの主張を分かりやすく伝えるために文章を練って作成します。その意味では「辞は達するのみ」という意識を強く持って作成する必要があるのだと思っています。

 書面作成のポイント~受け手が読んだ時、どのように感じるのかを考える                            
法科大学院で教えていたときに、学生の書いた書面を見ると、自分が調べたことや思いついたことを書き連ねているだけで、受け手に何を伝えたいのかという文書の目的が伝わらないものが少なくありませんでした。これはトレーニング不足もありますが、受け手がその書面を読んでどのように感じるのかということに対する想像力の乏しさに原因があるのではないかと思ったことがありました。

多くの書類のやり取りは、受け取った相手がその書類を読んで何らかのリアクションをすることを期待して行うものですが、そのリアクションがあった時に自分が更にどのように対応するかということまで考えただけでも文書の作成の深みが違ってきます。

実は、私が大学時代に所属していたのは司法試験の受験サークルではなく将棋部だったのですが、将棋の世界には「三手の読み」という言葉があります。自分が一手指して、相手に次の手を指された時に自分がどのように対応するかまで考えてから自分の一手目の着手をしなさいという教えですが、このように考える習慣をつけると、当然二手目の相手の着手も読まなければならないので、独りよがりの考えはできないことになります。

文書を作成するときも同様で、それを読んだ相手の応対を予測して文書の構成や表現の強弱などを工夫すると効果的な文書を作成することができます。このように考えると、「言葉は通じればよいのだ」といっても、かなり奥が深いことが分かります。

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論語の言葉は、今から2500年以上も前に孔子やその弟子たちの口から発せられたとして伝えられているものですが、多様に解釈できる余地があるので、受け取る人の置かれている境遇によって、その言葉をどのように捉えるかが違うのかもしれません。

私の今の立場は、論語の心をお伝えする準備をしているところなので、なおさら意味を伝えることを意識するのかもしれません。

これからも、折に触れて、論語の言葉を引用してブログに投稿するので、興味があったら読んでみてください。


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