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裁判員と死刑制度(1) [弁護士・法律・裁判]

裁判員制度の実施を今年の5月に控え,最近はいろいろな人から裁判員制度のことについて質問されることが多くなりました。
質問の多くは,裁判員制度に批判的なマスコミ報道の影響もあるのでしょうが,どちらかというと,何であんな制度を入れることにしたのかというものです。

私自身は,裁判員制度については,賛成の立場ですが,その理由は以下のような考えからです。

これまでの刑事裁判は,司法試験合格後,司法修習を経て直ぐに判事補になって,その後は裁判官としてのキャリアしか持たない人たちが,事実認定から量刑(どのような刑にするか)も含め全て決めていました。

そして,多くの裁判官は,自らが犯罪の現場に直接立ち会うことはありませんので,警察や検察官が作成した証拠書類と裁判所に呼び出した証人,被告人自身の話をもとに事実認定をするのですが,そこには,自らの体験に基づいた判断があるわけではありません。

裁判官は法律のプロではあっても,事実認定については一般の市民と異なる素養を持っている訳ではありません。事件を数多く経験しているという意味で,裁判における事実認定に慣れているということはありますが,この慣れという点については,マイナスの面も少なくありません。

特に,日本の裁判のように,有罪率が90%を大きく超えるような状況であれば,裁判官が有罪を前提に事件を見るようになるのも仕方のないことで,そこに刑事手続の大前提である「無罪の推定」(「疑わしきは被告人の利益に」という原則)はなく,無罪判決を勝ち取るためには,弁護側が無罪の立証をしなければならないという現実(「疑わしきは有罪」という現実)があります。

そのような,有罪の推定のもとで判断をする職業裁判官ではなく,事実認定に健全な社会人の常識を反映してもらいたいという趣旨で導入されたのが裁判員制度です。

先日テレビを見ていると,裁判官が多忙なので,一般市民にその肩代わりをさせるためにこの制度が導入されたという,とんでもない勘違いの話をしている元検察官がいましたが,裁判員制度の導入にあたってこのような議論がなされたことはありません。

裁判員制度の導入について,街頭インタビューの回答を見ていると,自分が死刑判決をするのは嫌だという答えがかなり多くの人から返ってきます。それはその通りで,私も死刑判決をするのは嫌です。

しかし,自分が死刑判決をするのは嫌なのに,凶悪事件が起きると,直ぐに死刑にすべきだという声が多くなるというのは矛盾していないでしょうか。

私は,死刑判決について,自らが裁判員になったとしても死刑判決を下すだろうという強い気持ちを持てないのであれば,「犯人を死刑にしろ」などと発言するのは慎むべきだと思っています。

死刑制度の矛盾点については,次回に述べたいと思います。

裁判員と死刑制度(2)はこちら


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