事業仕分け

民主党政権になってからもっとも変化を感じられるのが，政治家と官僚の関係ではないかと感じています。

旧政権下では，行政経験豊富な官僚が，知識のない政治家をうまく使っていたという印象がありますが，現政権では，政治家が自らの考えで官僚の行動をコントロールしていると感じられます。それは，民主主義の帰結なので結構なことなのですが，最近になって感じるのは，政策に対する政治家の近視眼的な評価がこの国の力をそぐことにならないかという危惧です。

先週末に前半戦が終わった行政刷新会議の事業仕分け作業では，各省庁が官僚ＯＢを優遇するために中間搾取のためだけの無駄な組織を作っていた実態が明らかになってきました。その中間搾取を無くするための事業仕分けは大歓迎ですが，科学技術分野の予算について，簡単に削減や廃止の結論が出されることには，とても納得がいかない部分があります。

科学技術の分野というのは，そもそも私たちがまだ知らない事柄や技術を開発するためのものであり，そこに投じられる予算や人々の努力も，効率を重んじて直ぐに結果が出る程度のものにしか取り組まないのであれば，逆に役に立たないレベルの発明・発見にしかならないということに気付くべきです。

事業仕分けの項目として，スーパーコンピューターの分野で「世界１を目指す必要がある。」との担当者の説明に対して，仕分け人から「どうして２番ではだめなのですか？」という質問が出されている場面がテレビで報じられていましたが，新しい発明・開発するためには２番を目指すなどということでは全くモチベーションは上がらないということに気付かない全くナンセンスな質問で呆れてしまいました。

これでは，財務省の作ったシナリオによって議論がコントロールされているとの批判もあながち的外れではないなという印象を受けたのは私だけでしょうか。

事業仕分けによって浮かび上がった旧政権下における官僚のやりたい放題を改善するのは大いにやっていただきたいことですが，本当に重要な未来に対する投資を止めてしまうと，この国が将来，研究開発の分野で競争力を持たない国になり下がってしまうことにもなりかねないということにもう少し意を払うべきではないでしょうか。

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