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法科大学院を取り巻く現状は [弁護士・法律・裁判]

法科大学院のあり方について議論している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)法科大学院特別委員会が、全74校のうち、14校について、教育内容や学生の質の確保などで問題があり、大幅な改善が必要な「重点校」とする調査結果をまとめたことが分かった。その他の12校も、継続的に改善の努力が必要な「継続校」とした。
(朝日新聞HPより ※リンク切れのため削除しました)

私も,法科大学院教育に関わっている関係上,この報道には無関心ではいられません

幸い,北海道大学や北海道内のもう一つの法科大学院である北海学園大学は,「重点校」にも「継続校」にも挙げられていなかったので,一安心ではありますが,問題は深刻にとらえるべきだと思います。

法科大学院は,当初の構想の段階では,卒業生の7割程度が合格できる制度を目指していたはずでしたが,法科大学院を認可する文部科学省が設置基準を満たせばそれだけで設置を認めてしまったために,当初想定していた2倍近い定員になってしまったことから,合格率7割という数字はまったく無理な状況になってしまっている訳です。

そのうえ,司法試験に合格してその後の司法修習を終えても,大量に増加する弁護士希望者を採用する法律事務所の方でも吸収しきれず,就職先がなくていきなり独立しなければならない弁護士がちらほらと現れているという問題もあります。

加えて,弁護士会や法科大学院は強く反対しているものの,今年の司法試験の合格者からは,司法修習中の給与の支給が廃止され,生活費が不足する場合には国がお金を貸しますという制度に変わることになりそうです。先日,その貸付の仕組みが示されましたが,標準的な修習生に対する貸与額は月額23万円,これを修習期間中借りると,12か月で276万円になりますが,これを修習終了後5年間は据え置きで,その後10年間の分割で返済していくということが予定されている制度です。

弁護士経験5年以上であれば,年額27万6000円を返済することはそれほど難しいことではないかもしれませんが,今後大量に生み出される弁護士の中には,生活するのがやっとというレベルの弁護士も現れるのではないかという危惧は拭えません。

この状態が何を意味するかというと,このような将来の見えない職業をはたして優秀な人材が目指すだろうかということです。弁護士を含む法曹が一定のレベルを維持して信頼に応え続ける存在であるということは,社会のインフラとして重要なものだと思うのですが,このまま行ってしまうと,その将来は危ういような気がします。

おりしも,今日,私の担当している北大の授業が後期の最終回で,卒業を予定している学生には,受験に向けての心構えを伝えたところですが,彼らが司法試験に合格しても,給与はもらえないので,私たちとは異質の司法修習生活を送るというのはやはりかわいそうだなという気がします。

このブログは私の教え子の皆さんも見ていると思いますが,受験生に伝えたいことは(今日,学生にも伝えたことですが),これから試験本番に向けては,新しい知識を吸収するためのインプットを意識するのではなく,アウトプットの練習(答案練習)を重点的に行うべきだということです。

司法試験は,それほど細かな知識を問う試験ではありません。それよりも,論理的な思考力が試される試験なので,これまでの試験を繰り返し解いてみることを通じて,出題の構造や期待されている回答の仕方などを身につける方が重要です。そして,答案練習の中で自分の知識のあやふやな部分に気付けばそこを固めていくという勉強方法がベストの方法だと思います。

法科大学院卒業を間近に控えた学生諸君の検討を祈ります。


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