モラトリアム法が企業の首を絞めることになる? [ニュース・社会]
鳩山内閣当時に亀井金融担当大臣が発案して実現した「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)」(通称「モラトリアム法」)が昨年の12月4日に施行されてから1年が過ぎました。
この法律の目的は,2008年秋のいわゆるリーマンショックに端を発した金融危機以降,資金繰りが厳しくなった中小企業などに対して,返済を一時猶予して不安心理を和らげるのが目的だったと言われています。
そのため,この法律は,元本の返済猶予だけでなく,返済期間の延長や借り換えなど,負担軽減につながるすべての措置が受けやすくなる施策が盛り込まれており,それだけを取り上げるならば,債務者保護に資する法律であるといえます。
しかし,この円滑化法はその法律の名前からも分かるように,臨時措置法であって,2011年3月までの時限立法です。そして,残念なことに,この円滑化法によって返済が猶予されている間に企業の経営環境が大幅に改善されたということはなく,単なる延命策にしかならなかったのではないかと感じています。
単なる延命にしかならないというだけであれば,功罪の功の方が勝るかもしれませんが,この円滑化法にすがったために会社の命を縮めることになる中小企業が続出するのではないかというのが今日のお話のテーマです。
今年の6月末現在,金融機関が中小企業の返済条件緩和を行った件数は,39万738件(金額13兆3,959億円)に達していますが,円滑化法を利用するためには「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を作成して金融機関に提出することが要件とされていました。しかし,今日明日の資金繰りに汲々としている会社に,すぐに「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を提出するように求めても無理なので,経営改善計画はこの法律の適用を受けてから1年以内に提出すれば良いこととされました。
そのため,経営改善の見通しがないままでも,とりあえずは,円滑化法によって金融に関する支援を受けることができるようになったため,資金的に苦しい企業はこぞって円滑化法の適用申請をするようになったのです。おそらく,その中には,当面どうしても必要というわけではなかったけれども,資金繰りを少しでも楽にしておきたいという思惑から,申請を行った企業もあったと思われます。
ところが,円滑化法の施行から1年が経過した現在,借り手の中小企業から提出されるべき経営改善計画はほとんど提出されていないという事態が表面化してきました。円滑化法施行時と比べて経営環境が大幅に改善されていれば,そのことを踏まえて経営改善計画を立てられたかもしれませんが,外部要因が好転しないのに「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を作成することは至難の業です。
おそらく独自にこのような計画が立てられる企業であれば,景気の低迷期であったとしても自力で経営を維持するだけの力量を既に持っている可能性も高いので,経営改善計画を立てられないのはむしろ仕方のないことかもしれません。
しかし,1年以内にこの経営改善計画を提出できなければ,金融機関は法律に定めた義務を履行していないと判断せざるを得なくなるので,融資に関しては厳しい姿勢を取らざるを得なくなります。
もちろん,経営改善計画書は出せばよいというものではなく,6か月に一度,金融機関から金融庁に対して「計画の進捗の報告」がなされることになっているので,「改善計画を現実に行うこと」も金融機関の協力を維持するための要件となります。
このように,円滑化法の適用を受けた後のハードルはとても高いので,円滑化法に頼らなければ,それほど厳しい金融機関への報告義務を課されなかったのに,円滑化法を利用してしまったために,経営改善計画が提出できない,あるいは計画が実行できないという理由で,金融機関から見放されてしまう中小企業が出てくるのは必至だと思います。
そのようなことになれば,この法律に安易に頼ってしまっために,逆に会社から資金を引き揚げられてしまうという事態も十分に起こり得るということは理解しておく必要があります。
経営改善計画の策定は,単に数字をいじっただけでできるものではありません。経営の根本から見直す必要があることも少なくないので,まずは中小企業診断士などの信頼できる経営専門家に相談してみてください。
この法律の目的は,2008年秋のいわゆるリーマンショックに端を発した金融危機以降,資金繰りが厳しくなった中小企業などに対して,返済を一時猶予して不安心理を和らげるのが目的だったと言われています。
そのため,この法律は,元本の返済猶予だけでなく,返済期間の延長や借り換えなど,負担軽減につながるすべての措置が受けやすくなる施策が盛り込まれており,それだけを取り上げるならば,債務者保護に資する法律であるといえます。
しかし,この円滑化法はその法律の名前からも分かるように,臨時措置法であって,2011年3月までの時限立法です。そして,残念なことに,この円滑化法によって返済が猶予されている間に企業の経営環境が大幅に改善されたということはなく,単なる延命策にしかならなかったのではないかと感じています。
単なる延命にしかならないというだけであれば,功罪の功の方が勝るかもしれませんが,この円滑化法にすがったために会社の命を縮めることになる中小企業が続出するのではないかというのが今日のお話のテーマです。
今年の6月末現在,金融機関が中小企業の返済条件緩和を行った件数は,39万738件(金額13兆3,959億円)に達していますが,円滑化法を利用するためには「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を作成して金融機関に提出することが要件とされていました。しかし,今日明日の資金繰りに汲々としている会社に,すぐに「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を提出するように求めても無理なので,経営改善計画はこの法律の適用を受けてから1年以内に提出すれば良いこととされました。
そのため,経営改善の見通しがないままでも,とりあえずは,円滑化法によって金融に関する支援を受けることができるようになったため,資金的に苦しい企業はこぞって円滑化法の適用申請をするようになったのです。おそらく,その中には,当面どうしても必要というわけではなかったけれども,資金繰りを少しでも楽にしておきたいという思惑から,申請を行った企業もあったと思われます。
ところが,円滑化法の施行から1年が経過した現在,借り手の中小企業から提出されるべき経営改善計画はほとんど提出されていないという事態が表面化してきました。円滑化法施行時と比べて経営環境が大幅に改善されていれば,そのことを踏まえて経営改善計画を立てられたかもしれませんが,外部要因が好転しないのに「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」を作成することは至難の業です。
おそらく独自にこのような計画が立てられる企業であれば,景気の低迷期であったとしても自力で経営を維持するだけの力量を既に持っている可能性も高いので,経営改善計画を立てられないのはむしろ仕方のないことかもしれません。
しかし,1年以内にこの経営改善計画を提出できなければ,金融機関は法律に定めた義務を履行していないと判断せざるを得なくなるので,融資に関しては厳しい姿勢を取らざるを得なくなります。
もちろん,経営改善計画書は出せばよいというものではなく,6か月に一度,金融機関から金融庁に対して「計画の進捗の報告」がなされることになっているので,「改善計画を現実に行うこと」も金融機関の協力を維持するための要件となります。
このように,円滑化法の適用を受けた後のハードルはとても高いので,円滑化法に頼らなければ,それほど厳しい金融機関への報告義務を課されなかったのに,円滑化法を利用してしまったために,経営改善計画が提出できない,あるいは計画が実行できないという理由で,金融機関から見放されてしまう中小企業が出てくるのは必至だと思います。
そのようなことになれば,この法律に安易に頼ってしまっために,逆に会社から資金を引き揚げられてしまうという事態も十分に起こり得るということは理解しておく必要があります。
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