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為替デリバティブの恐怖-その実態と対策(2) [企業経営・経済]

為替デリバティブといっても金融派生商品の総称ですから、顧客企業にとって大きな被害をもたらしていないものもありますが、いま一番大きな問題となっているのが通貨オプション取引なので、この仕組みをご説明しましょう。

銀行が為替デリバティブを販売し出したのは、平成16~7年がピークと言われていますが、そのころ各銀行は、政府の「金融再生プログラム」の中で不良債権処理に追われていたことや、銀行に投入された公的資金の返済のために、高収益をもくろんで通貨オプション取引の売り込みに傾注したと考えられます。

通貨オプションとは、将来の特定の時期に通貨(ドルの場合が多いので、以下はドル建てで説明します。)を特定の価格で買う権利のことを言います。例えば、1年後に1ドル100円で10万ドルを購入する権利(オプション)を持っていると、円安になって1ドル110円になった時でも、金融機関から1ドル100円でドルを調達できるので、円安リスクを回避できることになります。オプションは購入する「権利」なので、オプションを行使しないこともできますから、1ドル100円よりも円高の場合にはオプションを行使しなければ良いのです。

ここで。円安リスクと言いましたが、円安リスクはドル建てで買った商品の支払の際に発生するものですから、国際取引をしていない企業にとっては、リスクを回避する必要がないのですから、通貨オプションはそもそも必要のないものです。

ここまで説明を読んでも、これでどうして円高による損失が生じるかは分からないと思います。円高によるリスクのお話はこれからです。

通貨オプションは、外貨を購入する方が相手方にオプション料を支払わなければならないものです。したがって、円安リスクを回避するために、オプション料を支払うのは一種の保険料みたいなものですが、リスクをそれほど深刻に考えていない企業にとっては、オプション料の負担が大きいのでなかなか契約に至らないという問題があります。そこで出てくるのが、ゼロオプションの契約です。カラクリは、同日に同じレートの売りと買いをセットにして契約をすることで、相互にオプション料を支払うことになるので、表面上オプション料が発生しないようにするのです。ところがその際、企業側から見て買いのオプションの2~3倍の金額の売りのオプションが設定されているので問題が大きくなります。(どうしてそうなるのか、仕組みはよく分かりませんが、おそらく金融機関が受け取るオプション料の方が、単価が高いということなのだろうと思います。)

このように、金融機関と顧客企業はお互いに相手方に対してオプションを持つことになります。オプションの行使日のレートが円安になれば、金融機関は権利を行使しませんので、顧客企業だけが権利を行使してその分の差額を利益として受け取れます。先程の例でいうと、行使日のレートが円安になって1ドル120円になれば200万円の利益を得られる計算になります。逆にレートが1ドル80円の円高になれば金融機関側が2~3倍の金額のオプションを行使するので、顧客企業は400万円から600万円の損失を被ることになるのです。

企業にとっては、円高のリスクを負わなければならない理由は何もないはずなのですが、オプション料をゼロにして契約させやすくするという金融機関の思惑によって、とんでもないリスクを追い込む羽目になってしまう訳です。

次回は、金融機関の勧誘の問題点について取り上げます。

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為替デリバティブの恐怖-その実態と対策(1) [企業経営・経済]

為替デリバティブ取引で経営危機に陥っている企業が少なくありません。デリバティブは金融派生商品の総称ですが、企業の為替リスクを回避するためと称して金融機関が売り込んだものが、最近の円高傾向により企業にとって大きな損失となっているのです。

この契約は、取引市場があってその市場の取引を業者が仲介する株式や商品先物取引などと違い、金融機関と企業との相対(あいたい)取引なので、企業が為替変動で利益を出した時には金融機関がそれだけ損をすることになりますし、逆の場合には金融機関が利益を得ることになります。

市場の仲介をするだけの取引であれば仲介業者は手数料を受け取るだけなので、顧客から多くの利益を得ようとするときには手数料を受け取れる取引を活発に行うしかないのですが、相対取引の場合には、金融機関が手数料よりもはるかに大きな利益を得るチャンスがあるのです。

ここまで説明すると、為替が円安になればその分金融機関が損をするのだからお互い様ではないかという感想を持つ方もいるかもしれませんが、多くの取引では、為替が一定の割合を超えて円安に振れると契約が失効するという特約が付いているので、金融機関が被る損失は限定的です。加えて、金融機関は、為替変動を予測した時には、契約高に相当する金額の外貨を実際に購入しておけば損失を回避することも可能です。外国為替市場に直接アクセスできる金融機関にとって、顧客企業とのデリバティブ契約はローリスク・ハイリターンのかなりうまみのある取引といえるでしょう。

このように金融機関側には損失回避の手段があるのに、企業側は、当初の契約で定めたレートで5年前後の一定期間、定期的に外貨の売買をしなければならず、企業側の損失が広がるときには契約の失効特約はありませんので、昨今の未曽有の円高の状況になったとしても、当初の契約通り外貨を売買しなければならないので、その損失は計り知れない金額になっているのです。

金融機関がデリバティブ取引を働きかけた企業の多くは、本業で利益を出している優良企業なので、何とか持ちこたえている企業もありますが、内情はキャッシュが不足して火の車という状態の企業も少なくありません。

ただ、大きな損失を出していることが外部に漏れると、大きな信用問題に発展してしまう恐れもあるので、損失を被った経営者の多くはじっと我慢しているのです。

為替デリバティブ取引については、上記以外にも様々な問題がありますので、今回から数回に分けて、為替デリバティブの恐ろしさと、解決の方法についてアップしていきたいと思います。

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